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社会保険料を滞納している事業者は「倒産の可能性が高い」と判断され、融資支援しても徒労に終わります。ご注意ください。
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
先日、ある士業団体で行われた「融資に関する勉強会」で講師として登壇したとき、受講者から下記のような質問がありました。
一方、社会保険料を滞納していても
同じように融資をしてもらえないのでしょうか?
この質問は他の場でもよくいただきますので、本稿でも詳しく説明しましょう。
※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に900名以上います
融資をする際(とくに初めての融資時)、通常、金融機関は依頼者に納税証明を徴求します。税金の延滞があれば、そこでわかります。
そこまで税金の滞納に目を光らせるのは、税金には「先取特権」(債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利)があるからです。税金を延滞していると、「差押え」される可能性が高くなります。
融資した資金がその場で差し押さえられては返済どころではありませんので、金融機関は納税を延滞している事業者にけっして融資をしません。もちろん社会保険料にも先取特権はありますが、「国税」「地方税」の後順位です。
社会保険料を滞納している事業者は税金を滞納していることも多いので、まず金融機関は税金の滞納について厳しく確認。昔はそこで納税が確認できれば、社会保険料の納入証明は徴求せずに融資することがしばしばありました。
納税していても社保は滞納している「かもしれない」企業に貸していたのは、納税していて社保を滞納している事例がほとんど見られなかったからです。「税金を払っているなら当然、社保も払っているもの」と考えていたのです。
そもそも私が金融機関に勤務していた当時、社会保険の納付証明を入手する方法がなく…というより、あったかもしれませんが、ほとんどの金融機関職員はその存在を知りませんでした。
社会保険料の滞納を調べるなら、3期分以上の決算書の勘定科目明細から細かく分析していたでしょう。しかし社会保険料の滞納で差し押えられた事例が当時ほとんどなかったので、そこまで手間暇をかけてまで社会保険料の滞納状況を調べることはしていませんでした。
今、たとえ「社会保険料の滞納があれば、融資は望めません」とサポートをお断りしても、「以前は融資してもらえたのに」と主張する相談者がいるかもしれません。しかし士業・コンサルタントとしては、「それは昔の話です」とお答えするより他ないでしょう。
昔なら社会保険料を滞納しても、よほど悪質なケースでない限り「差押え」されることはあまりありませんでした。しかし最近、年金事務所による滞納金の取り立てが強化され、差押えが増えています。
「差押え」されると事業者は資金繰りが悪化するため、倒産に至るケースが見られるようになってきました。これを「社保倒産」と言います。社会保険料の滞納で、事業継続できないリスクが高まるのです。
「社保倒産」については、『DAIAMOND ONLINE』に興味深い記事がありました。ぜひ目を通してみてください。
●中小企業を年金事務所が倒産に追い込む…「社保倒産」知られざる驚愕の実態
今は多くの金融機関が、社会保険料を滞納している事業者に融資しません。その理由のひとつは、先ほどの「倒産リスクが高い事業者と判断されるから」です。
また、もうひとつ別の理由があります。
差押えをされると当該事業者は【期限の利益】を喪失するため、金融機関は、高確率でその事業者に対し「融資金の返済」を求めます。
既存融資の返済を求めるぐらいですから、当然、その事業者には新規融資を行うことはありません。
多額の社会保険料を滞納している事業者は、「差押えされる可能性が高い事業者」と判断され、金融機関は融資をしなくなります。
納税証明書についてはよく知られていますが、社会保険料を納付している状況を明らかにする書類をご存じない読者も多いでしょう。
※実は私も本稿を書くまで知りませんでした…
事業所が社会保険料を納入している状況を明らかにする書類としては、「社会保険料納入証明書」および「社会保険料納入確認書」の2種類があります。
いずれの書類も、事業主からの申請に基づき発行されます。
士業やコンサルタントとして、今までまったくつきあいのない事業者から融資サポートの問い合わせや依頼があった場合は、最初に以下について質問してください。
●税金 → 滞納はないか
●社会保険料 → 多額の滞納はないか(目安:年商の10%以上)
上記のうち1つでも「NG」があれば、「融資してもらえる可能性がほぼゼロ」の事業者です。その案件について前向きな取り組みはおすすめしません。どうぞご注意ください。
「融資してもらえる/してもらえない」事業者の見極めは、それほど難しくありません。
「金融機関の判断基準」を把握していれば、高い精度で融資の可否を判断できます。上に書いた「信用情報/税金/社会保険料」の3点は、判断の基礎となる知識といえるでしょう。
「融資してもらえない事業者」にどれだけ肩入れしても、時間と手間の無駄。一方、「融資してもらえる事業者」と判断できれば確実に報酬が発生します。スムーズな事務所運営のためには、相談者の「融資可能性」の見極めが肝心です。
そんな「融資してもらえる/してもらえない」事業者をすぐ見極められる士業・コンサルタントになるためのヒントが手に入ります。
※融資に関する質問などにもその場でお答えします
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