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経営者保証解除を目指す秘策とは

金融庁の経営者保証解除は道半ばです。

こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。

2022年12月23日に、金融庁は「経営者保証改革プログラム」を策定しました。内容については、以前の記事を参考にしてください。

「経営者保証改革プログラム」-金融庁は本気です

経営者保証の解除について、金融機関の認識には、かなりの差があるようです。金融機関が融資を実行するには、融資した資金が安全に回収できるよう、「保全」を厚くして融資を実行するのが一般的です。「保全」として、保証や担保があります。

2023年4月より、経営者保証が不要の融資が利用できます。金融機関も声高に保全を求めにくくなるかもしれません。逆に、経営者は、取引先金融機関と今まで以上に親密な関係を構築していく必要があるでしょう

本記事では、経営者保証の解除を経営者に推し進める際に、士業・コンサルタントの皆さんが覚えておきたいことについて紹介します。
 

経営者保証における金融機関の現状

2022年10月、金融庁は、「主要行等及び地域銀行の「経営者保証に依存しない融資に関する取組状況~金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群(KPI)~」一覧及び公表状況」を公表しました。

令和3年度下期(令和3年10月~令和4年3月)の経営者保証に依存しない融資の割合

下の表は、令和3年度下期(令和3年10月~令和4年3月)の経営者保証に依存しない融資の割合(地方銀行・第二地方銀行100行)です。

【経営者保証に依存しない融資の割合(地方銀行・第二地方銀行100行)】

順位 経営者保証に依存しないベスト5行 経営者保証に依存しないワースト5行
銀行名 割合 銀行名 割合
1 東京スター銀行 88.80% 福岡中央銀行 11.20%
2 北國銀行 85.00% 神奈川銀行 11.90%
3 西京銀行 74.90% 静岡中央銀行 21.90%
4 南都銀行 67.80% 鹿児島銀行 22.60%
5 仙台銀行 57.90% 筑邦銀行 23.00%
地方銀行・第二地方銀行(100行) 平均 35.98%  
経営者保証に依存しない割合  50%以上 8行   30%以下 25行

(出典:金融庁「主要行等及び地域銀行の「経営者保証に依存しない融資に関する取組状況~金融仲介の取組状況を客観的に評価できる指標群(KPI)~」一覧及び公表状況」より作表)

金融庁の資料より、経営者保証に依存する銀行と、金融庁が目指している経営者保証に依存しない銀行との二極化が読み取れます。11.20%~88.80%と振れ幅の大きいのが特徴です

経営者保証に依存しない割合が50%以上の銀行が8行なのに対し、30%以下の銀行が、地方銀行・第二地方銀行100行中、4分の1に当たる25行となっています。金融庁が、経営者保証の見直しを叫んで久しいですが、まだまだ浸透していないことが浮き彫りになっていることがデータから読み取れます

2022年12月に金融庁が発表した「経営者保証改革プログラム」は、2022年10月にリリースした上記の結果を踏まえた、より強いメッセージを含んだ施策であるとも読み取れるでしょう

保全を重要視

経営者保証に依存する金融機関が多い理由として、今まで金融機関が踏襲してきた「保証」「担保」といった「保全」を重視していることがあります。

従来(現在もそうかもしれませんが)、金融機関は、融資審査の際、融資した資金が安全に回収できるかを一番に考えます。そのため、融資先の法人に対し金融機関は、保証人あるいは担保を求めることが一般的とされています。

融資した法人が倒産等により返済が厳しくなった場合、金融機関は回収を図らなければなりません。具体例として、保証人から融資金を回収したり、担保として差し入れた不動産等を売却等したりします。極端かもしれませんが、金融機関は保全を優先し、貸出先の将来性等を二の次にしてきた証左であるといえるかもしれません

金融庁が指摘している点がまさにこの点です。そのため、各金融機関は融資担当者に「目利き」の強化を図っています。しかしながら、経営者保証に依存しない融資の割合には反映されているとはいい難いといえるでしょう。
 

経営者保証を解除するためには?

経営者保証を解除するにはどのような手続きや条件があるのかを、ここでは簡単にみていきましょう。詳細については次の記事に記していますので、ぜひお読みください。

経営者保証を外せる財務コンサルタントの具体的業務3点

経営者保証免除対応確認書の提出

経営者保証免除対応確認書に記載されている事項に関しては、最低限クリアしておく必要があります。

・資産超過であること
・法人と経営者の資産・経理が区分されていること
・法人と経営者との間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えていないこと

 


●経営者保証免除対応確認書(大阪府-令和4年2月1日改正版

顧客である経営者が、経営者保証免除対応確認書に示されている点を満たしているのかを、士業・コンサルタントは決算書等で確認します。今後、経営者保証の免除を検討している経営者に対して、取引金融機関への自発的に決算書類の提出を促します

士業・コンサルタントは、経営者に以下の2点をアドバイスすることを推奨します。

・経営者に、資金繰り表や試算表等、決算関連書類が出来上がる都度、取引金融機関担当者に提出する
・売上等、数字が大きく動いた勘定科目について、経営者は必ず金融機関担当者に要因を説明する

 
また、少なくとも四半期ごとには金融機関の印象もよくなるので、士業・コンサルタントも経営者と取引先金融機関に同行しましょう。
 

経営者保証を解除に導く書類、経営者個人の財産目録

経営者保証免除対応確認書を提出する際、経営者は、金融機関が確認する法人の決算状況や法人と経営者との資金のやりとりに目がいきがちです。必要書類として記されているので、いわば当然のことといえます。

金融機関に経営者保証の解除を目指すには、他の経営者が行っていない、別の方法でアプローチします。それは、経営者個人の財産目録の作成です。金融機関に対し、経営者個人の財産目録を作成することで、次の2点が強調できます。

・経営者のお金に対する考え方
・金融機関への経営者保証解除後の安心感

 
士業・コンサルタントは、この2点を経営者にアドバイスする必要があります。

経営者のお金に対する考え方

経営者保証の解除を申し出るには、法人のお金と個人のお金とを切り離しているのが条件です。加えて、経営者の財産の目録を金融機関に提示することにより、法人・個人のお金が切り離されていることがより明確になります。

金融機関は、経営者個人が、自身のお金の管理をしっかりしていることを確認できます。当然、金融機関に対する経営者の評価も上がるでしょう。

金融機関への経営者保証解除後の安心感

経営者保証を解除することは金融機関にとって、法人への融資の保全がゼロになります。決算状況を見れば回収に問題がないと考えるものの、それでも金融機関は、不測の事態を考えます

士業・コンサルタントは、経営者に金融機関の保全に関する考え方を認識してもらうことが必要です。経営者が自身の財産目録を提示することで、金融機関に安心感を与えることも助言します。同時に、金融機関にとって保全はゼロのままではあるものの、経営者が率先して財産目録を提示することで、信用度も増すことも伝えましょう。

法人・個人とのお金の切り離しはできているものの、金融機関は、経営者個人が、どれくらいの資産があるのかが気になります。あえて提示することで、経営者保証の解除に有利に働くでしょう。
 

経営者個人の財産目録作成の注意点

財産目録は、資産や負債がわかれば問題ありません。その根拠資料として、通帳のコピーやローンの返済予定表、登記簿謄本等を添付すれば十分です。

注意点として、以下の2点があるので紹介します。

・ローンの返済状況
・不動産

 

ローンの返済状況

取引先金融機関を含め、経営者個人のローン履歴に延滞があると、経営者保証の解除は厳しくなる恐れがあるので注意が必要です。

延滞状況について、金融機関は、他行を含めた返済履歴を12ヵ月くらいまでさかのぼってチェックするのが一般的です

例えば、直近半年間には延滞がないが、10ヵ月前に1日延滞がある場合でも、金融機関は厳しくチェックする恐れがあります。少なくとも、直近12ヵ月間は延滞履歴がないようにしておきましょう

不動産

意外かもしれませんが、経営者個人が所有する不動産もチェックしておきましょう。特に、住宅ローンを完済していて、完済後の抵当権をそのままにしているのであれば即抹消しましょう。

住宅ローンが完済すれば、通常、担保として不動産に設定していた抵当権を抹消します。抹消せずに放置している場合がありますので、必ず抹消しておきましょう。

抵当権抹消も、お金の管理の一環と考えれば納得できるでしょう


経営者保証の解除を導くには次の3点です。

・法人の決算状況が経営者保証解除の条件に合致していること
・法人と経営者とのお金のやりとりが問題ないこと
・自発的に決算状況および個人資産を開示していること

 
先ほどの経営者保証に対する金融機関の取り組み結果において、必ずしも金融機関は積極的とはいえないかもしれません。しかしながら、監督官庁である金融庁が経営者保証の解除に舵を切った以上、金融機関は目利き力の強化を図ることで、対応せざるを得なくなるでしょう。

士業・コンサルタントは、経営者にとって、今が経営者保証の解除を申し出る準備期間として認識してもらえるよう、提案することを推奨します。

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