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「金融機関から借りてほしいと頼まれた」と経営者の相談を受けたら、支援している士業・コンサルタントとしてどう答えますか?
こんにちは。株式会社ネクストフェイズのヒガシカワです。
結論からいえば私は「借りておく」のをおすすめしますが、当然そのメリット/デメリットがあり、さらに経営者の性格・傾向を加味したアドバイスが必要です。
中小企業をサポートする士業・コンサルタントとしては、経営者が決断しやすい材料を複数お伝えしたいものです。
※なおネクストフェイズは、事業者への個別アドバイスを行っていません。ご相談のある事業者は、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員を検索して気軽に連絡を取ってください。融資の専門研修を受けた融資コンサルタントが、全国に900名以上います
借入を行えばキャッシュポジションが高くなり、積極的に投資を行うことができるでしょう。省力化のためのIT導入、人材採用のための新規広告、販促ツールの見直し、従業員のリスキリング(研修)など、経営課題に対して「この手が打てる」「あの方法を試してみよう」など、経営の自由度が高まります。
しかし資金繰りが厳しいと、どうしても支出を絞る傾向になります。そうなると攻めの経営をしたくても「資金繰りが厳しくなる」ことを恐れ、投資を避けがちになります。
もちろん不要な投資は問題外ですが、ある程度の投資を行わないと次の成長は望めません。将来的に必要な投資を惜しまないためにも、一定レベルまでキャッシュポジションを高めておくことは最初にお伝えしたいメリットです。
2つの企業があるとしましょう。どちらが融資をしてもらいやすいかというと、圧倒的にB社です。
●B社 借入3,000万円・現預金3,100万円
借入がなくても現預金が少なければ、不測の事態で資金が急に必要になった際に対応しきれません。キャッシュポジションが低いと、リスク耐久力が低下するのです。
しかし借入が多くてもそれに見合う現預金があれば、不測の事態でも余裕を持って対応することができます。
金融機関もそれがわかっているので、「借入が多くても現預金が多い企業は潰れにくい」と判断し、融資に前向きに応じてくれます。
業績が悪化し、債務超過や経常赤字になった場合、金融機関は融資に対して消極的になります。
上記でもお話しましたが、キャッシュポジションが低ければ、業績悪化=即・資金繰り悪化です。そのときになって金融機関へ融資を申し込んでも、貸してもらえる可能性は低いでしょう。貸してもらえなければ、倒産の2文字が現実味を帯びます。
しかし、たとえ業績が悪化してもキャッシュポジションが高ければ、融資を申し込む必要はありません。プールしていた現預金を充てることができるからです。
緊急の融資を受けなくても一定の期間は持ちこたえられますから、融資してもらえない=即・倒産とならずに済むのです。
「融資してもらっても、使い先がない」という考える企業もあるでしょう。しかし使い先がなければ、そのまま預金しておけばいいのです。
「不要な融資を受けて、不要な利息を払って、しかもそのまま預金するなんて」と、理解に苦しむかもしれません。しかし、よく聞いてください。近ごろの銀行事情の話です。
マイナス金利が導入されてから、金融機関は預金を集めることに消極的でした。が、金利が上昇傾向にあると予想される最近は、多くの金融機関が預金を集めることに積極的になってきました。
なぜなら「金利が高くなると、集めた預金を国債等で運用して確実に収益を上げられるから」です。「預金協力」を行う企業に対する金融機関の心証は上がります。
また、融資している企業が預金もしてくれると、「実効金利」が高くなります。金融機関の当該企業に対する収益率は高まります。
※実効金利とは、借入を行っている企業が「預金も」している場合の借り手が実際に負担する実質的な金利のこと。借入金利より預金金利のほうが水準が低いため、表面金利に比べて高くなる
●預金なし → 実効金利5%
借入額1,000万円/借入金利5%/預金額0円
(500,000円(借入利息)/10,000,000円(借入額)×100=5%)
●預金あり → 実効金利9%
借入額1,000万円/借入金利5%/預金額500万円/預金金利1%
((500,000円(借入利息)-50,000円(預金利息)/10,000,000円(借入額)-5,000,000円(預金額))×100=9%)
「実効金利が高くなるとわかっていて、なぜ、わざわざ借りてまで預金を」と不思議に思う経営者もいるでしょう。しかし預金を積み上げれば「より儲けさせてくれる企業」として、金融機関はこの企業を大事にしてくれるようになります。
この「金融機関が自社を大事にしてくれる」状態を構築し、さらに維持していけるのは、企業として大きなメリットです。
必要でない資金を借りることで、本来なら支払う必要のない借入利息が発生します。その結果、収益が悪化するという影響があります。
資金ポジションが高くなると、経費の要不要を深く吟味せず「ま、いっか」と支払ってしまいがちです。そうなると事業運営の精度が低くなり、収益率が下がります。
「借金がある」ことに、モチベーションよりプレッシャーを感じやすい経営者がいることはたしかです。無用な心配ごとを避けるため、できるだけ「無借金経営」を目指す経営者もしばしば見かけるほどです。
そして経営者が心身ともに健やかに保つことは、事業を進めるにあたっていちばん大切なこと。それぞれの会社に、それぞれの成長ペースがあります。士業・コンサルタントとしては、「借りること」のメリットを強調しすぎて、経営者に融資を無理強いしないように心得たいものです。
金融機関から借りられるだけ借り、キャッシュポジションが高くなった結果、気が大きくなって不要な投資や買い物をしたがる経営者がたまにいます。このような性格の経営者に、「銀行が打診してきたから」といって不要な借入をおすすめしてはいけません。
近年のコロナ融資でも、金融機関から勧められて不要な資金を借りた経営者が多くいました。「せっかく国が積極的に貸してくれるんだし、金利も保証料も不要だし、いざというときのために」と言われたら、「じゃ、とりあえず」と答えたくなるものです。
しかしその中で、「仮想通貨(何とは言わない)に投資して溶かした」「高級EV車(どことは言わない)を購入、しかも改造費に大きな資金を投入した」という経営者の話は何度か耳にしました。
※他の事例としては「高級SUB車」「高級腕時計」(どれとは言わない)、また「美術品」などもありました…
このような企業が業績悪化して新たに資金を借りたくなっても、以前借りたコロナ融資の使い途を銀行から尋ねられると胸を張って答えることはできないでしょう。銀行も「そういう経営者なら」と融資してくれず、廃業に至った企業が何社かありました。
堅実な経営者なら、あのコロナ融資も、もし有効な使い途がなければ預金しておいたはずです。「借りられるだけ借りる」ことができる状況で借りてもプールしておけない傾向の経営者には、借りることによるデメリットもていねいにご説明しましょう。
私の考えは「借りられるなら借りておくべき」です。もちろん上記のように「おすすめしない」経営者のケースもありますが、一般的にはメリットとデメリットを比較すると、借りておくメリット=金融機関との関係構築のほうが大きいと考えるからです。
たとえば借入利息は、経費。決算が黒字の企業ならその分を浮かせて税金を多めに支払うより、金融機関との良好な関係を構築する費用だと考えられるでしょう。
以下はコロナ渦中の過去記事で、今とは状況が多少違います。が、「融資を受けることで銀行からの信用を得よう」という私の考えは変わりません。また「融資があるからこそ、深くつながることができる」と銀行が考える理由も記載しています。あわせてご覧ください。
また創業期の積極的な借入のメリットについては、以下の過去記事も参考になるでしょう。単発業務の多い行政書士などの士業が、長くおつきあいできる「顧問先」を得るヒントになれば幸いです。
借りる/借りないは、支援する士業・コンサルタントが判断することではなく、経営者が決めること。しかしメリット/デメリットを複数提示し、スムーズな判断をサポートしたいものです。
そんな「借りるか借りないかの判断材料を提示できる士業・コンサルタント」になるためのヒントが手に入ります。
※融資に関する質問などにもその場でお答えします
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