- 2015-5-8
- 士業インタビュー
- インタビュー, ネクストフェイズ編集部, 社長対談, 税理士
![](https://www.npc.bz/nextphase/wp-content/uploads/2015/05/inoda0_1.jpg)
東京都墨田区で開業している税理士・猪田昭一(いのだ・しょういち)さんは、
独立3年目を迎えた29歳。
そう、まだ20代! しかも、もう独立3年目なんです。
営業は一切しないのに絶賛繁盛中というその理由を中心に、
ネクストフェイズ社長…というか、
今回はむしろ中小企業診断士としてのヒガシカワとご対談いただきました。
ユニークな仕事スタイル、金融機関との関係を作っていく方法、
関与先から融資相談を受けたら税理士的にどうなのとか、
専門家が知っておきたい各種の公的補助金、地域密着主義の貫きかた、
地元の士業ネットワークづくり、次世代を見据えた事業計画…などなど、
会話はまるでジェットコースターのようにスピーディでエキサイティング。
ふたりのお喋りをそばで聞いているような気になれる(ことを目指した)ライブな対談、
今回はたっぷり10回連載でお届けしましょう。
猪田さんが展開する内容の広さと濃さのおかげで、破格の読みごたえですよ。
【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。
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第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
東川 お金のない創業者をお客さんにしておられるのに、どうやって費用をもらうんかなと。
猪田 銀行さんとか、あと、いろんなところがですね、最近手伝ってくれるんですよ。
東川 銀行さん?
猪田 はい、創業者向けの公的制度を利用するときは、その方々を全部、銀行さんに紹介するようにしています。
東川 銀行さんにとっては、「猪田さんは新しいお客さんを連れてきてくれる人物」だと。
猪田 最近、信金さんも経営厳しいでしょ。年金をもらっているおばあちゃんをお客さんにしていても、その方がお亡くなりになると、おばあちゃんが貯めたお金を、遺族は都市銀に持ってっちゃう。昔だったら遺産を信金に置きっぱなしにしておいて何かあったら使えばいいや、くらいなものだったんですけど、家族が核家族化してきたせいでしょうね。
東川 その要因は大きいと思いますよ。
猪田 つまり「今のままでは預金残高が減りまっせ」と信金さんに僕、言っているんです。今後お客さまが絶対的に減っていくしかないこの現状で、創業者を拾うことを始めないと、肝心のお客さまが新陳代謝していかない。そこに危機感を感じてすでに動き始めている信金さんと、仲よくさせてもらってて。
東川 それを僕は10年前から、ずっと金融機関に言い続けとったんです。「新規客を取りにいこうと思ったら、創業者を育てんとアカンで」と。でも金融機関はその立場上、リスクを取りづらいんでね。やっと最近、保証協会使ってみるとか、あと、政策金融公庫との連携とか動き出してきましたが。
猪田 先日、ある信金さんから「どうやったら創業者を顧客にできるかをしゃべってください」と言われたんです。その信金さんは創業スクール設立を考えておられたんで、要するに「ウチの創業スクールをどう運営したら、新規客が増えますか」という話です。そこで僕、「じゃあまず、創業スクールを作るのやめましょう」と言いました(笑)。
東川 ははは。
猪田 「創業スクール作るより、僕みたいなのを10人育てなさい」って。
●仕事を語る猪田さんは、本当に、心から楽しそうです
東川 猪田さんみたいに、「できる」人間をね。
猪田 そうすれば信金さんは、創業者に直接営業しなくて済みますよね。僕は創業者と出会うと、金融機関の課長や支店長、本部の直通電話などにさっさと連絡して、「課長、ちょっとさ、こんなやついるんだけど、融資どう? やる? やらない?」って聞きます。そういう僕みたいな、「創業者に銀行を紹介しますよ」という人間を10人作れば、銀行さんとしては外に営業マン抱えるのと一緒でしょ。
東川 そのとおりです。
猪田 だってね、銀行さんが創業希望者を10人集めてきたとしても、実際に創業するのはたいてい1人ほど、さらにその後その人が融資を必要とするかどうかとなると、たぶん創業3年後くらいに、その話が出る確率は半分半分だよって。そんなのやっていてもしょうがないから、僕らみたいな「金融機関と距離の近い専門家」を育てたほうが面白いんじゃないのと信金の本部でプレゼンしたんですが、「上司に報告書書けません」って言われて(笑)。「ああ、そうだよねー。でも、それが現実だと思いますよ」って話をして帰ってきたんです。
東川 それ、もう一歩進めたらエエですよ。士業集めて、行員との勉強会やるんですよ。実際に僕、大阪でやってるんですけど、それって前に猪田さんにもご参加いただいた「融資に強い税理士養成講座 」なんです。今は2カ月に一度その講座やっています。そこに金融機関の人間に来てもらって、いろんな話をしてもらったりして、いつも盛会ですよ。勉強会ならけっこう簡単に開催できるし、金融機関とのパイプも作れますしね。
猪田 創業スクールといえば私、墨田区限定の創業スクールをお手伝いしていて、でも税理士1人でやるのも限界があって。
東川 それはもうしんどいでしょうね。
猪田 なので墨田在住・在勤の士業で、しかも若手の人々をつないでいこうと考えています。墨田の若手士業をつなぐ目的のひとつは、さっき言った信金さんとのパイプを作りやすくすること。うちに連絡すれば、サッと動ける士業がいるから、全部地域の人で全部仕事回しますよって。
東川 ほかにも目的が?
猪田 産業競争力強化法 が始まったじゃないですか。で、「ウチも墨田区内で創業を応援している団体ですよ」ということで、あの特定認定に入るように段取りを開始しているんです。認定されれば、金融機関さんに対してもアピールをしやすい環境を作っていけるでしょう。で、さらに創業スクール運営して…。
東川 おおー。若手士業をつなぐ構想、広がっていますね。
猪田 ええ、最近感じるんですけど、お客さんのスパンといいますか、ビジネスモデルの変化のスパンも短くなってきて、税理士って、お客さんがしぼんでいくんですよ。
東川 お客さんが「しぼんでいく」?
(次回に続きます)
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【もくじ】
第1回 ほとんどの顧客が法人。個人さんは受けません。なぜなら…。
第2回 金融機関にとって「役に立つ」税理士。
第3回 地域の若手士業と、どんどん連携していきます。
第4回 顧客からの融資相談、コツさえつかめば難しくないのに…。
第5回 公的補助金申請のお手伝い、する? しない?
第6回 地場で連携して、この土地から新しいものを。
第7回 自治体訪問時に、みかん置いてきたりして。
第8回 税理士も、クリエイティブに。
第9回 次世代の経営者を育てると、自分も育っていく。
第10回 「すきま」は、つついていると広がる。