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士業・コンサルタントがAIを「使える」から「使いこなす」へ – 経営者の融資相談とプロンプト例

AIを、メール作成や検索、要約だけに使っていませんか。AI活用を「作業」「思考」「業務プロセス」の3段階で捉え直すと、税理士をはじめ士業・コンサルタントが提供できる付加価値支援スピードは劇的に変わります。顧客からの「融資相談」を題材にした具体的なAI活用法を、プロンプト例とあわせて解説します。

【この記事のポイント(要約)】

  • AI活用の3段階
    単なる「①作業(効率化)」にとどめず、「②思考(壁打ち)」「③業務プロセス全体」へ組み込むことで、士業・コンサルタントの付加価値は劇的に向上
  • 融資実務へのフル活用
    ①経営者の不安心理の言語化、②金融機関目線のヒアリング設計、③辛口銀行員を模した模擬面談など、融資相談の全工程でAIを伴走させる
  • AIと専門家、明確な役割分担
    情報整理や反論想定はAIに任せ、士業自身は「顧客との信頼構築」や「金融機関とのリアルな交渉・判断」に集中

生成AIの導入が進み、メールの下書き作成、長文資料の要約、Web検索の代替として、日常的に利用する士業・コンサルタントも多いでしょう。

しかし「AIを使っているものの、実務のコア部分で使いこなせている実感がない」と感じている人も多いもの。とくにAIに関する情報を読めば読むほど、「自分なんて、まだまだ…」と自信を持てないものです。

では、AIを「使える」レベルから、専門家として「使いこなす」レベルへ進むには何が必要なのでしょうか。

今回は、士業・コンサルタントがAIを相棒にして実務の質を高めるための「3つの活用フェーズ」と、顧問先からの「融資相談」を題材にした具体的なAI活用法について解説します。

AI活用は「作業」「思考」「業務」の3段階で考える

AI活用の深度は、大きく「①作業」「②思考」「③業務」の3つの段階に分類できます。

活用段階(フェーズ)主な目的具体的な活用例得られる付加価値
①作業
(効率化フェーズ)
時間短縮・ルーティン自動化文章の校正・下書き作成、議事録の要約、用語や制度の調査など事務的な作業の時間が削減され、本業に集中できる
②思考
(壁打ちフェーズ)
発想の拡大・論点漏れ防止ブレインストーミング、多面的な視点(顧客・銀行目線)の検証など検討の視野が広がり、提案の論理性・抜け漏れ防止が高まる
③業務
(プロセス統合)
案件全体の伴走・品質向上相談準備からヒアリング設計、面談対策まで一連のフローでAIと協働専門家としての支援スピードと成約率が劇的に向上する

すでに「①作業」にAIを活用する士業・コンサルタントは多いでしょう。それをさらに「②思考」「③業務プロセス」に広げることで、専門家としての判断力や提案力を格段に引き上げることができます。

経営者の融資相談を「業務×AI」で進める実践フロー

多くの士業・コンサルタント(とくに顧問税理士財務コンサルタント)が直面する「融資相談」を例に、具体的なAI活用を見ていきましょう。

(1)相談前の準備:経営者の「不安な心理」を想定する

経営者がメインバンクへ行く前に、まず顧問税理士身近な専門家に相談してくる場合、そこには必ず「銀行には直接言えない不安や警戒心」があります。

  • 「最近の決算数字が悪化しており、銀行にそのまま見せると貸し渋り金利引き上げに遭うのではないか」
  • 資金使途を正直に伝えると、不利な条件(金利、返済期間など)を突きつけられるのではないか」
  • 「メインバンクの担当者との関係が希薄で、門前払いされないか心配だ」 など

面談前にAIへプロンプトを投げ、経営者が抱えている可能性のある心理的ハードルや前提条件を洗い出しておきます。

【AIへのプロンプト例(面談前準備)】

卸売業を営む年商8,000万円の経営者から『運転資金の融資を受けたいが、銀行に行く前に相談したい』と連絡がありました。直近期は減益見込みです。この経営者が金融機関に対して抱いているであろう不安・懸念事項と、初回の面談で専門家が配慮すべき心理的ポイントを5つ挙げてください。

事前に経営者の不安を言語化しておくことで、寄り添ったヒアリングが可能になります。

(2)ヒアリング設計:融資稟議を見据えた項目の洗い出し

経営者からの融資相談の場で、「いくら必要ですか?」とだけ聞くのでは不十分です。金融機関が融資稟議書を作成する際に必要となるポイント(資金使途、返済財源、保全、定性要因など)網羅して聞き取る必要があります。

AIを活用して、業種や財務状況に応じた「深掘りすべきヒアリングシート案」事前に生成しておきます。

  • 資金が必要になった真の要因(売掛金の回収長期化、在庫の滞留、設備更新など)
  • 現在の資金繰り実績と今後の資金繰り予測
  • 主要取引先ごとの取引条件(サイト)の変化
  • 金融機関との現在の取引状況および借入残高・返済額 など

なお士業・コンサルタントが融資相談時に確認すべき具体的なヒアリング項目については、ネクストフェイズが作成したガイドブックを無料で配布しています。ご興味のある士業・コンサルタントは、ぜひお申し込みください。

●「融資相談ヒアリング 完全ガイド」内容の一部

また融資相談時のヒアリング内容については、以下の過去記事もあわせてご参照ください。

(3)面談後の分析・論点整理:抜け漏れのチェック

面談時のメモや文字起こしテキスト(※個人情報・機密情報を伏せたもの)をAIに読み込ませ、整理してもらいましょう。

【AIへのプロンプト例(ヒアリング後の論点整理)】

以下のテキストは、融資希望の経営者から聞き取ったメモです。金融機関の融資担当者が稟議書を書くにあたって「情報として不足している点」「追加でヒアリングすべき重要論点」を指摘してください。

● 面談メモ:……(ここに面談時のメモを入れます)

自分一人では見落としがち「数字の不整合」、また「定性情報の不足」をAIが客観的に指摘してくれるため、次回面談への準備がスムーズになります。

ちなみに元金融機関職員として13年勤務した私の実感として、この「定性情報の不足」を当時よく目にしました。また現在も、ネクストフェイズが運営する一般社団法人融資コンサルタント協会の会員士業・コンサルタントから寄せられる相談でも、この定性情報がしばしば不足しています。

融資の申請とあって、つい「数字だけ」で説明しがちなんですね。しかし、たとえば「前期は売上が2,000万円落ちた」だけではなく、「なぜ落ちたか」まで銀行員は知りたいのです。

(4)金融機関面談対策:AIを「辛口な銀行員」に見立てたロールプレイング

融資申請書類(事業計画書資金使途説明書など)の下書きができたら、AIに銀行員役を演じてもらいましょう。

【AIへのプロンプト例(模擬面談・質問シミュレーション)】

あなたは地方銀行(または信用金庫など)の融資審査担当者です。極めて慎重かつ論理的な性格です。以下の事業計画書および資金使途説明を読み、審査を通す上で最も懸念されるリスクや、面談時に経営者へ投げかける厳しい質問を5つ挙げてください。

● 事業計画概要:……(ここに事業計画を入れます)

AIから返ってきた厳しい質問に対する「回答ロジック」を経営者と一緒に事前に用意しておくことで、本番の金融機関面談での成功率を飛躍的に高めることができます。何より、経営者が心理的に落ち着いて面談に臨めるのは大きなメリットです。

セミナー企画など他業務への応用

この「プロセス全体でのAI活用」は融資相談だけでなく、セミナーの企画・運営など他の業務でも同様です。

たとえば「セミナーのタイトルを考えて」と単発で依頼するのではなく、以下の例のように一連の工程にAIを組み込むことで、成果物の質が安定します。

  • セミナーを受講するターゲット層の潜在的な課題の深掘り
  • カリキュラムの論理構成の妥当性検証
  • 告知文・集客メールの作成
  • 開催後の受講者アンケートの多面的分析、次回開催するときの改善提案

「新規で資金調達するほどではないが、今の資金繰りが厳しい」、「既存債務の返済額の負担が大きいが、リスケは避けたい。何か手はないか」、「この補助金は自社に利用できそうか」等、経営者から相談があったときなどに、一度ぜひご自身でも試してみてください。

経営者から相談を受けた仕事のなかで、AIに任せられる「①作業」はないか。

AIと一緒に考えられる「②思考」はないか。

そして、仕事の一部分だけではなく、「③業務」全体のなかでAIを活用できる場面はないか。

この3つの視点から考えてみると、これまでとは違ったAIの使い方が見つかると思います。キーポイントは、「業務の一連の工程」を頭にイメージしておくことです。

AIに任せる領域と、専門家が担う領域を切り分ける

AIを使いこなす上で最も重要なのは、「AIに任せる部分」と「人間(専門家)が担う部分」の明確な役割分担です

プロセス AIの役割
(思考・作業補助)
士業・コンサルタントの役割(判断・対人)
事前準備 ・懸念事項の洗い出し
・質問項目の生成
・業況、また経営者の人柄なども汲み取った関係構築
面談・分析・議事録の整理
・情報不足、論点漏れの抽出
・数字の背景にある経営実態の把握
・融資可能性の見極め
提案・交渉・計画書のドラフト作成
・想定質問の生成
・最適な金融機関・調達手法の選定
・経営者への意思決定支援

情報の構造化、論点出し、反論シミュレーションといった「思考の補助」はAIに任せ、士業・コンサルタント自身は「顧客との信頼構築」「最終的な意思決定」「金融機関との橋渡し」に注力する。これこそが、AI時代に士業・コンサルタントが目指すべき動き方だといえるでしょう。

士業・コンサルタントのAI活用に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 顧客の決算書や面談メモをAIに入力しても守秘義務やセキュリティ上問題ありませんか?

A1. 個人名・企業名、固有の取引先名、具体的な勘定科目金額などの機密情報はマスキング(仮名化・概数化)して入力するのが鉄則です。また、入力データがAIの学習に利用されないよう「オプトアウト設定(データ学習をOFFにする設定)」が有効になっているビジネス向けプランやAPI(他のソフト等と連携する仕組み)を利用してください。

Q2. AIを使えば、融資の専門知識がなくても融資支援業務を受任できますか?

A2. AIは書類作成や論点整理を強力に支援しますが、「どの金融機関がどの業種に積極的か」「担当支店の最近の融資姿勢」「保証協会の内規」といったリアルな判断基準までは持ち合わせていません。AIを活かすためにも、融資の基礎知識と金融機関の考え方を習得しておくことが不可欠です。

Q3. ChatGPT、Claude、Geminiなど複数ありますが、どれを使うべきですか?

A3. 文章作成、論理的思考の壁打ち、最新の法改正や金融機関の公表データ調査…。目的によって使い分けるのが理想ですが、すべてに課金したり、すべてを柔軟に使いこなすのは難しいですよね。まずは使い慣れた最新の有料版モデルを、1つ、業務フローに深く組み込むことから始めるのがおすすめです。

金融機関の「リアルな判断基準」を知ればAIの能力はさらに活きる

上記のとおり、AIの活用で事前のヒアリング設計が緻密になったり、面談準備のスピードが格段に上がったりします。

しかしAIが生成した事業計画書や想定質問に対して、「実際にどの金融機関に、どのような順番でアプローチすべきか」「銀行の担当者が稟議を通しやすくなるツボはどこか」を判断できるのは、融資実務の仕組みを知る専門家だけです。

  • 「経営者から融資相談を受けた際、自信を持って具体的なアドバイスができるようになりたい」
  • AIを補助輪として使いながら、高単価な融資支援業務を事務所の柱にしたい」

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※顧客の融資に関する個別質問などにもその場でお答えします

この記事の著者

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東川 仁

株式会社ネクストフェイズ 代表/中小企業診断士一般社団法人融資コンサルタント協会 代表理事
士業・コンサルタント向けに、銀行融資の支援、金融機関との関係づくりをテーマとした研修・セミナーを実施。

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